ココロザシ勝手に応援団

金継ぎnico

金継ぎnico 

07.21.2010


ある日WEBサイト上で見た一枚の写真に、私はこころ奪われました。
下の器の写真です。

 

nico-2.jpg
 

陶器の割れ目が丁寧に直されていて

ポイントとなっている赤いストライプは、どうやら違う陶片がつけられているよう。

色々な歴史が重なって存在しているその器は、とても美しく見えました。


この器の修理をした人は「金継ぎnico」さんというらしい。

「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりした焼き物を漆で接着し

蒔絵の技術で金粉を蒔いて、磨いて、継いだ線を美しく光らせる技法で

ずっと昔から日本にあるらしい。


調べていくうちに、私はすっかり「金継ぎ」に興味を持ってしまいました。

でも同じ金継ぎ師さんの仕事でも、nicoさんの仕事から生き返った器は特に

かわいくて生き生きしているように見えます。

そして、ちょっぴり身近な存在のように感じるのです。


今回のココロザシ勝手に応援団は、そんな「金継ぎnico」さんのご紹介です。

 



材料も技法もほとんど独学

すべてを賭けてこつこつ学んだ10年間。



nicoさんが「金継ぎ」を知ったのは、自分がお気に入りのお皿を割ってしまったとき。

たまたま見た雑誌の金継ぎ特集がきっかけでした。


自分で修理できるなんて、楽しそう!と

すぐにその誌面に掲載されていた金継ぎの教室に応募したnicoさん。

金継ぎの歴史の話はとても面白く、どんどん惹かれていきました。



しかし、教室ではちゃんとした金継ぎを習うことが出来なかったそうです。

数百年続く日本の金継ぎは、

飲食に使っても害がないように接着を漆で行うものなのですが

その教室では、パテ(接着剤)を使って器の割れ目をくっつけてしまっていました。

nicoさんは、漆を使った昔からの金継ぎ技術を習得したいと

他にもいくつか教室に通いましたが

やはり、現代版の簡易的な材料に置きかえられていたり、

漆を使っていても、教える側が金継ぎに関する知識がなかったりと

満足のいく教室には出会えませんでした。



途方にくれたnicoさんは、古典的な技法は自分で学ぶしかない、と決意。

国会図書館で昔の金継ぎ技術を調べたり

江戸時代に金継ぎされた器を分解して下地を調べたり

割れた骨董品を買い集めて、何度も修理の練習をしたり…


とにかく金継ぎに関連するものは何でも手にとってみたというnicoさん。

「接着」に関することならなんでも勉強になると、

歯医者さんに話を聞きに行ったこともあるそう。

こうして、こつこつと実験を繰り返すこと10年。

やっとのことで、古典的な技法での金継ぎができるようになったそうです。

 

 

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nicoさんのアトリエ。すべてが器のために用意されたつくり。

 

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修理の研究用の土器がいっぱい。
 

 

 


 

やっと出会った、運命の漆。
 


「金継ぎnico」で使われている漆はすべて、

岩手県浄法寺の漆搔き職人さんによるものです。

nicoさんは一番金継ぎに適した漆がとれるという盛夏に

岩手県に行き、1年分の漆を買い付けています。

 

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浄法寺の漆掻き職人さん。

 


現在、日本で使われている漆の98パーセントが中国産だと言われています。

nicoさんも金継ぎを勉強していたころどこで漆を買っていいかわからず

東急ハンズなどでチューブに入ったものを購入していました。

しかし、見よう見まねで陶器をくっつけようとしてみるものの、うまくいかない。

安価な中国産の漆では、強さが足りなかったのです。



そんな時、たまたま見ていたテレビにヒントがありました。

それはなんと「漆殺人事件」※という番組。

人が死ぬきっかけが漆にあるとつきとめた警察が、

東北の漆掻き職人を尋ねます。

※正式ドラマ名ではありません。


今まで漆をとっている現場を見たことがなかったnicoさんは

その番組を見てとても驚きました。

そして、漆掻きの人に会って話を聞きたい!とすぐに役場に電話。

最初は個人が金継ぎに使うためにわざわざ岩手に来た、ということを

なかなか信じてもらえなかったが

古典的な金継ぎを残したいという熱意が通じて、譲ってもらえるようになったそうです。

 

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漆掻きの現場。白い樹液が漆です。

 

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ミなど入ったままの、採取したままの漆を和紙で漉してゴミなどを取り除き、

その後修理に適した漆にするため、「ナヤシ」という漆の粒子を均一にするための

撹拌作業を工房で行うそう。

 

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強靭で美しい艶がある漆が、金継ぎにはぴったり。
中国産のものとは全然強度が違うんだそう。


 

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丁寧に漆を重ねていく

 

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面をあわせて

 

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接着はゆっくり。

 


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漆はパテ等に比べて高価だし、とても時間がかかる。
接着に時間をかけて継いだ方が、
器に負担がなく良い接着ができるのです。

 

 

 

 

 


自分でも、漆で器を直してみてほしい。

 

 


「金継ぎnico」では、自分で器を修理するためのキットも販売しています。

 

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色々な種類の器をじっくり直したい人向けの「クロコ」と
 

 

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小さな欠けを直してみたい人向けの「チビクロ」です。
 


漆は、浄法寺のものをnicoさん自身が調整しチューブ詰めしたもの。

色んなやきものに対応できるように、形を工夫したヘラも手作り。

器を傷つけずに美しく漆金を磨くために、紙やすりではなく葉っぱを使用。

nicoさんが、金継ぎへの愛情を丁寧に詰め込んだキットです。



nicoさんは教室をやらないと決めています。それは

1日2〜3時間という限られた時間では、金継ぎは覚えられないと思っているからです。

何かをはしょらずにすべて教えるためには、教室を開いたとしても、

ハードすぎて習う側も楽しくはできなくなってしまう。

けれど自分で器を直したい人の気持ちもわかる。

だから、このキットで時間を十分使って自分でやってみてほしい、

という気持ちが込められているのです。
 

 

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1年かかったというマニュアル本。


 

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色んな事例に対して丁寧に修理の仕方が解説されている。

 


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普段使っている道具も、修理する器に合わせてすべて手作りというのがすごい。
 

 

 


 

古典的な技術を守りながら、
現代に合わせた技術を開発していきたい。

 


nicoさんのアトリエには、沢山のお客さんから預かっている

器たちが大切に保管されています。

修理には最低でも半年。難しいものだと数年かかるそうです。

「そんな長い間修理を待ってくれている、お客さんがすごいと思う」とnicoさんは言います。
 

 

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一番良い状態で、修理中の器を保管できるように

特注したという漆風呂というヒノキの箪笥。

 



金継ぎがさかんだった桃山時代や江戸時代では

修理するものといえば、裕福な家庭のお茶道具でした。

でも、今nicoさんの元にくるものは、すごく高価な骨董品もあるけれど

修学旅行で自分が作ったという陶器や結婚祝いにもらったお皿など、

普段使いされるものもあります。


普通に使っても大丈夫なように、昔よりもさらに強度の高い

金継ぎが必要になっているのです。


自分が元気で生きているうちに、今の時代にあった修理法を見つけて

それをずっと残していきたい―というnicoさん。

全部自分で学んできたからこその技術が、そこにはありました。


もし、大切な器を割ってしまったら―

これからは、器のことを一生懸命に考えてくれる、金継ぎnicoさんがいる。

そう思うと、なんだか少し、わくわくしてきます。

 



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nicoさんのアトリエ訪問
 

 

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研究で修理された器が並ぶ、nicoさんのアトリエ。

 

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「呼び継ぎ」という技法で生まれ変わる予定の器たち。

 

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割れ目も美しい。

 

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ほとんど欠けてしまっている部分は、麻布をベースに直すそう。

 

 

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私がnicoさんを知るきっかけにもなった「密買東京」さんでオーダーした

漆マークの黒ダルマが、器たちを見守っています。

 


  nico-19.jpg
何事にも絶対に妥協しない姿勢が、美しい仕事を生み出しているのだと思います。

金継ぎnicoさん、ありがとうございました!




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今回ご紹介させていただいた方々

金継ぎnicoさん

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